性交渉の同意うんぬん

ジャニーズ性加害を発端として『性加害』という言葉がようやく定着した日本。松本人志さんの性加害疑惑で今年も性加害という言葉が世に氾濫しそうな予感です。成人した男女の問題だから厳密な性加害とはズレてるような気もしていてハラスメントの範疇のような気もします。

しかも性加害というからには、
同意があったかなかったか、という話になって
これってどうやって証明するの?っていつもモヤモヤとしてしまうのは私だけでしょうか。

性交渉のタイミングは
生殖、暴力、快楽の3パターンあると言われています。

生殖つまり子作りに励む場合は日本では婚姻関係にある場合がほとんどで
性交渉の同意が概ねすんなりあるというイメージがあります。これがフランスだと婚姻関係がどうとか言わないケースが増えますね。

性暴力に関してはどちらかが害を受けていることを指し示すワードであり
同意がないのは明らかです。議論の余地がないとは思うのですが性交渉を行うことに同意できない旨を示すことが力関係によっては難しい場面がありそうです。

例えば上司と部下という関係や、業界の権力者と業界の名前も通っていない者との関係など
パワーバランスが明らかな場合は同意無き性交渉が行われるパターンだと想像します。

最後に快楽を求めて行う性交渉。
ここが同意の中では一番難しい気がします。相手も喜んで性交渉に至り、自分も喜んで性交渉に至る場面です。

例えば容姿が抜群であっても相手がその容姿を好みではない場合は
当然性交渉できると思ってお誘いしても相手は『そんな気分じゃないんです』と断られるでしょう。

こういう場合、気まずい空気が流れるのは想像に難くなく
2人の関係が簡単にぎくしゃくするだろうと思うんです。傷つくのに慣れていなければ怒る人だって出てくるでしょうし誘った人も誘われた人も『そんなつもりじゃなかった』と憤慨することだってよくあることに感じます。

そんなつもりじゃなかったと言った場合に、無理強いをすればもちろん性加害になるけれど
誘ったこと自体を咎められる可能性もあって『誘ったけどうまくいかなかったこと』までも性加害と言われかねない時代だなぁと思うんですよね(言ったもの勝ちのような)。性加害は犯罪です。でもお誘いは犯罪ではない…。

性交渉に至らない場合では
上記のような性加害疑惑を突きつけられる場合もありますが
当然性交渉した後に『実は乗り気じゃなかった、同意はしてなかった』と言われる場合も当然あると思います。その場合にはやっぱりもめると思うんです。やめてほしいと言える空気じゃなかったとか言われたらもうどうしていいかわかりませんよね。

同意がない場合はだめって言うんですが、
確実に同意を得ようと思ったらAVじゃないですけど性交渉に至る経過を動画で収めていなければ確たる証拠にはならない、
そんなフィクションのような世界が出来上がってしまいます。ほんとコントですよね。性交渉の同意なんてどうやってとるんだろう。社会が正解を持っているとは思えないんです。

昔読んだ宮台真司さんが書いた本に『子供に語る前に大人のための性教育』という本があります。

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この本には性交渉とは何ぞや、という部分が出てきます。
明確に性交渉とは、というのは難しいですが性交渉の属性が書かれています。
性交渉は言外、法外、損得外の行為の中にある、という記載。

言葉による約束、法律で縛る約束、損得、これらの範疇には性交渉は本来ないのだとしたら、行為の同意は馬鹿げた話のように感じます。同意する明確さはどう考えても言葉による明瞭さの範疇にあるのだから。

そして宮台真司さんはこうも言っています。
性交渉は贈与の範疇。
相手に送るものということですね。今社会的なルールは言葉によるし大概は法律でルールを強制しているし、損得勘定で性交渉を行うことだって往々にしてありますよね。二人の同意を証明するというのは言葉、法律、もしかしたら損得までも視野に入れたルールの中で性交渉を考えている証左なのかもしれません。

社会はルールの中に性交渉を置きたがり
本質はルールの外に性交渉があるのだとしたら
僕らはこの矛盾の中に生きなければならないわけです。

こういう社会だからこそ
あらかじめ決めておいた方がよさそう

性交渉の属性を理解したとしても社会の運用が違うのだからこそ
これから自分たちが性交渉とどう向き合うかを考えておいた方がいいと思っています。

性交渉が贈与の範疇であるということと、性交渉の同意が前提ということを考慮すると
誘うアクションを起こす人間としてはやっぱりどこか断られる前提でなければならない気がしています。

人間は断られるのが不得意な生き物です。
だから性交渉というプレゼントを用意したけどあなたは要らないのね、左様か、
くらいの心の強さが必要です。

良いプレゼントを用意したけどその良さがお気に召さないとか、相手が理解できないことはざらです。そこで不機嫌になる必要はなくて、傷つく必要もなくて、
贈与は断れらることがあって自分を否定されているんじゃないのだよ!という強い心構えを持っておくと。

あらかじめ、の必要性について。人間はある環境に置かれたときに物事を判断しようとすると間違うことが多いと思うからです。交通事故を起こそうと思って起こす人はいません。でも起きますよね。

右から車、車の後ろに自転車が隠れていて、対向車もあって、左から歩行者がいるような場面では交差点の情報量がめちゃくちゃに多いです。それを全部瞬時に処理できなければ事故るわけです。

そうではなくて、はじめからそういう状況になったこういう心持ちでいよう、行動はこうしようと決めておくべきです。
・性交渉に誘った相手は何があっても傷つけない
・断られても動揺しない

断られたときに負の感情の表出は
これまで築き上げてきた人間関係をすべて無効化してしまうダサさがあることを僕らは心得ておくべきです。性の相手としては受け入れてくれなかったけど逆に言えばその手前まで打ち明ける関係性は作れている場合だってあります。

性を愉しむ行為は豊かさの一つ。その豊かさが一瞬にして立ち消えてしまうような在り方ではもったいないですよね。自分がどう在りたいかをまず明確にすることから始めてみるといいかもしれません。